AIが対話を担う時代|AI面接の次に来る「電話AI」市場と電話放送局・DHK CANVASの躍進
いまAI業界で静かに進んでいるのは、「これまで人がやってきた対話を、AIが肩代わりする」という大きな地殻変動です。採用の現場で広がったAI面接(HireVueやharutakaなど)は、候補者の話し方や回答をAIが評価する仕組みでした。そして同じ波が、今度は企業の「電話対応」に押し寄せています。
この電話AI(ボイスボット)の分野には複数の有力サービスがありますが、本記事では市場全体を俯瞰したうえで、なかでも独自の存在感を放つ株式会社電話放送局と、同社のAI電話応答サービス「DHK CANVAS」に注目します。採用・人事の視点も交えながら、公開情報だけをもとに「対話をAIが担う時代」の全体像を掘り下げます。
AI業界の潮流は「対話の自動化」──採用も顧客対応も地続き

2026年のAI業界を貫くキーワードは、「対話業務の自動化」です。人が声や言葉でやり取りしてきた仕事を生成AIが担えるようになり、それが採用と顧客対応、両方の現場で同時に起きています。
採用の世界では、AI面接や録画面接の評価支援が一般化しました。候補者の回答内容・表情・話し方をAIが分析し、一次選考の負担を軽くする使われ方です。一方で顧客対応の世界では、電話の問い合わせにAIが音声で応対する「ボイスボット」が立ち上がってきました。評価する側か応対する側かの違いはあれど、根っこは同じ──人が担ってきた「対話」を、AIが引き受け始めたということです。
この2つを同時に押し上げているのが、深刻な人手不足です。採用がうまくいかず人を増やせない中で、企業は「人を採って対応させる」以外の選択肢を探しています。採用でカバーするのか、AIに任せるのか──この判断は、面接領域だけでなく電話対応の領域でも突きつけられています。
なぜ2026年、「電話」がAIの主戦場になったのか?
答えはシンプルで、電話が「最後まで人の手が残った対話業務」だったからです。チャットやメールの自動化が進んだ後も、電話だけは人が出る前提のまま取り残されてきました。受電のたびに担当者の手が止まり、営業時間外は取りこぼす。この非効率が長く放置されてきた領域に、生成AIがようやく実用レベルで入り込みました。
従来の自動音声(IVR)は「1番を押してください」の機械的な分岐が中心でしたが、生成AIによって、話し言葉を理解して自然に会話する「ボイスボット」へと段階が上がりました。24時間365日、有人オペレーターに代わって応対できる電話AIは、人手不足とコスト削減を同時に解決する切り札として、AI業界の次の主戦場になっています。
電話AI(ボイスボット)市場には、どんなサービスがあるのか?

電話AIの市場には、それぞれ強みの異なる有力サービスが複数あります。まずは代表的なプレイヤーを、公開情報をもとに中立的に見ておきましょう。
- IVRy(アイブリー):累計30,000アカウントを超える導入実績を公表している、中小企業から幅広く使われるAI電話自動応答サービス。少人数の代表電話の自動化から始めやすいのが特徴です。
- PKSHA VoiceAgent(旧PKSHA Voicebot):デロイト トーマツ ミック経済研究所の調査で「ボイスボット市場」シェアNo.1を公表。金融・インフラ・通信といった対応難度の高い業界での実績が豊富です。
- AI Messenger Voicebot(AI Shift/サイバーエージェント子会社):200社以上の導入知見をもとにした運用サポートと、予約システムや顧客DBなど外部システム連携に強みを持ちます。
- MOBI VOICE(モビルス):電話だけでなくチャット・Web・メールを一つのシステムで一元管理できる、マルチチャネル型のサービスです。
- DHK CANVAS(電話放送局):IVR(自動音声応答)を40年以上手がけてきた老舗が提供する、ノーコードのAI電話応答サービス。後述するとおり、シナリオ型から生成AIエージェント型まで段階的に使える点が特徴です。
ここで一つ、混同しやすい点を整理しておきます。「シェアNo.1」という言葉は市場の切り取り方で変わります。ボイスボット市場ではPKSHAがNo.1を公表している一方、電話放送局は、より歴史の長い「IVR(自動音声応答)市場」でNo.1を公表しています(いずれもミック経済研究所の調査)。同じ「電話AI」でも、どの市場区分で見るかで景色が違う、ということです。
電話AIサービスは、何で選ぶべきか?
結論を先に言うと、電話AIは「機能の派手さ」ではなく、止まらないインフラ・対応の柔軟さ・運用のしやすさ・自社の規模との相性で選ぶべきです。どのサービスも自動応答という入口は同じでも、土台の作りと得意領域が大きく異なるからです。具体的には、次の5つの軸で見比べると失敗しにくくなります。
- 対応レンジ:決まった流れで応対するシナリオ型だけか、生成AIが柔軟に会話するエージェント型まで対応するか。
- インフラの堅牢さ:重要な電話を落とさない通信基盤か。外部プラットフォーム依存か、自社で回線を持つか。
- 運用のしやすさ:ノーコードで自社で変更できるか。導入後に伴走してもらえるか。
- コスト設計:通話時間課金か件数課金か。自社の通話特性に合うか。
- 規模・業界との相性:少人数の代表電話向けか、大規模コールセンター向けか。金融・自治体のような堅い業界に耐えるか。
この5軸で見たときに、とりわけ「インフラの堅牢さ」と「シナリオと生成AIの両立」で独自の立ち位置にあるのが、電話放送局のDHK CANVASです。ここからは、その理由を会社の背景から掘り下げます。
電話放送局とはどんな会社か?IVR一筋の老舗の躍進
株式会社電話放送局は、IVR(自動音声応答)分野で市場シェアNo.1を持つ老舗です。生成AIブームで新規参入が相次ぐこの領域で、40年以上「電話の自動化」だけを磨いてきた専業カンパニーである点が、いまむしろ最大の強みになっています。
前身の創業は1978年、電話の自動化ひとすじ
同社の歴史は、前身の関西チェスコム株式会社が1978年に設立されたことに始まります。1993年には某国領事館のビザ・パスポート発給案内をIVRで提供し、1995年には日本初の24時間対応センターを構築。1996年に「電話もメディアである」という考えのもと、株式会社電話放送局として設立されました。クラウドという言葉が一般化するはるか前から、電話を使った情報提供の仕組みを作ってきた会社です。
IVR市場シェアNo.1、導入1,500社以上という実績

電話放送局の現在地は、公開されている数字が物語っています。IVR市場シェアはミック経済研究所の調査でNo.1、導入実績は1,500社以上、年間で対応するコール数は4,000万件超。さらに自社で7,000回線を超える通信基盤を保有し、大規模なコールセンターの受電にも耐えられる規模を持ちます。長年の運用で積み上げた「落ちない・止まらない」インフラは、新興プレイヤーが一朝一夕に真似できない資産です。
2025年7月、GROWTH VERSEへのグループインで加速
躍進の直接の引き金が、2025年7月にAI企業のGROWTH VERSE(グロースヴァース)グループへ加わったことです。これにより、電話放送局が培ってきた音声・IVRの実装力と、グループのAIエージェント構築技術が結びつきました。老舗の運用ノウハウに最先端のAIが乗る──この掛け算が、DHK CANVASの進化を一気に押し上げています。同社は代表挨拶でも、培ってきた音声サービスと最先端のAIを融合させ「これまでにない相乗効果を発揮する」と将来像を語っています。
DHK CANVASとは?ノーコードで作れるAI電話応答
DHK CANVASは、ノーコードでAI電話応答(ボイスボット)を設計・運用できるクラウドサービスです。専門的な開発をしなくても、必要な機能をパズルのように組み合わせるだけで、電話の自動応答フローを自分たちで作れます。
強みは対応レンジの広さです。あらかじめ決めた流れで応対する「シナリオ型」から、生成AIが内容を判断して会話する「AIエージェント型」まで、同じサービス内で段階的に導入できます。まずはよくある問い合わせの自動応答から始めて、慣れてきたら予約・注文の自動受付、さらにAIが自然に会話するボイスボットへと広げる。いきなり全部をAIに置き換えるのではなく、業務の成熟度に合わせて育てられる設計です。応答フローの変更や音声の差し替えも、利用者側でいつでも行えます。
DHK CANVASの何がすごいのか?矛盾を解いた「エージェントプラン」
DHK CANVASが際立ったのは、2026年4月15日に提供を開始した「エージェントプラン」で、これまで両立が難しかった2つの課題を同時に解いたからです。従来のボイスボットの「シナリオ外の質問に答えられない」弱点と、生成AIの「制御が難しく、何を言い出すか分からない」弱点。この相反する問題を独自技術で解決したのがエージェントプランです。
シナリオ制御とAIエージェントの「併用」という発想
核になっているのは、シナリオ制御とAIエージェントによる自律処理を用件ごとに使い分ける設計です。プレスリリースによれば、本人確認や住所変更のように正確さが絶対に必要な手続きはシナリオでかっちり制御し、FAQや複雑な問い合わせのように柔軟さが要る場面はAIエージェントが自律的に判断して応対します。「決められた通りに動く安心感」と「その場で考える柔軟さ」を切り替える。ただ生成AIを電話につないだだけのサービスとは、ここが決定的に違います。同社はこれを「考える電話応対」と表現しています。
自社インフラがもたらす安定性とセキュリティ
電話AIで見落とされがちなのが、土台となる通信インフラの堅牢さです。DHK CANVASは、自社運営のデータセンターに直接回線を引き込み、複数のキャリアで冗長構成を組んでいます。外部プラットフォームに依存しない設計で、7,000回線を超える規模を自社開発のロジックで支えている点は、40年以上IVR専業でやってきた電話放送局ならではです。「重要な電話を落とさない」信頼性は、金融や自治体のような領域ほど効いてきます。
「件課金」というコスト設計

コスト面でも工夫があります。エージェントプランは通話時間ではなく「件課金(コール課金)」を採用し、1件あたりで料金が決まります。分単位の課金と違い、長い通話が発生してもコストが読みやすく、複雑になりがちな問い合わせでも費用対効果を保ちやすい設計です。しかもこのプランは、従来なら数年かけて構築するソリューションを約3か月という短期間でリリースされました。老舗の実装基盤の上にグループのAI技術を重ねたからこそのスピードで、電話放送局の躍進を象徴する出来事です。
採用・人事の現場で、電話AIはどう活きるのか?

電話AIの主戦場は顧客対応ですが、実は採用・人事のオペレーションにも応用の余地があります。採用活動は、思っている以上に電話に依存しているからです。応募者からの問い合わせ、面接日程の調整、選考状況の確認──こうした一次対応の電話が、採用担当の時間を細切れに奪っています。
人手不足で「電話番を採用で増やす」ことが難しくなった今、この定型の電話対応をAIに任せられれば、採用担当は候補者一人ひとりと向き合う本質的な業務に集中できます。ving のコラムでも以前取り上げたように、「人を採るか、AIに任せるか」という判断は、もはや業務全般に広がっています。電話対応もその例外ではありません。AI面接が「選考する側の対話」を効率化したように、電話AIは「応募者・顧客と接する側の対話」を効率化する。同じ生成AIの波が、採用と現場運営の両方を変えていきます。
よくある質問(FAQ)
電話AI(ボイスボット)のサービスはどう選べばいいですか?
「対応レンジ(シナリオ型か生成AI型か)」「インフラの堅牢さ」「運用のしやすさ」「コスト設計」「自社の規模・業界との相性」の5つの軸で比較するのがおすすめです。少人数の代表電話ならIVRyのような手軽なサービス、大規模・堅い業界なら実績とインフラの厚いサービスが向きます。
PKSHAと電話放送局はどちらもシェアNo.1では?
市場区分が異なります。PKSHAは「ボイスボット市場」でシェアNo.1、電話放送局はより歴史の長い「IVR(自動音声応答)市場」でシェアNo.1を、それぞれ公表しています(いずれもミック経済研究所の調査)。同じ電話AIでも、どの市場で見るかで首位のプレイヤーが変わります。
DHK CANVASはプログラミングの知識がなくても使えますか?
使えます。DHK CANVASはノーコードで設計でき、必要な機能を組み合わせて電話応答フローを作れます。応答内容の変更や音声の差し替えも利用者側で行えます。
AI面接と電話AI(ボイスボット)は何が違いますか?
AI面接は候補者の回答や話し方をAIが評価・分析し採用選考を支援する仕組み、電話AIは顧客や応募者からの電話にAIが音声で応対する仕組みです。「評価する対話」か「応対する対話」かの違いはありますが、どちらも生成AIが人の対話業務を担う同じ潮流の中にあります。
電話AIは採用・人事の業務にも使えますか?
応用の余地があります。応募者からの一次問い合わせ、面接日程の調整、選考状況の確認といった定型の電話対応はAIが受けられる用件です。定型対応をAIに任せることで、採用担当は候補者と向き合う本質的な業務に集中しやすくなります。
まとめ:対話をAIが担う時代、選ぶ軸を持てば本命が見える
採用のAI面接も、顧客対応のボイスボットも、「人が担ってきた対話をAIが引き受ける」という一本の大きな流れの上にあります。電話AIの市場にはIVRy、PKSHA、AI Shift、モビルスなど有力なプレイヤーが並び、それぞれに得意領域があります。
そのなかで、止まらないインフラと「シナリオ×生成AI」の両立という軸で独自の存在感を放つのが、IVRを40年以上磨いてきた電話放送局のDHK CANVASです。生成AIを電話につなぐだけなら多くの会社にできますが、重要な電話を落とさない基盤、用件ごとに制御と自律を切り替える設計、そして「電話はメディアだ」という一貫した哲学まで備えたプレイヤーは多くありません。老舗の蓄積の上に最新AIが乗ったDHK CANVASの躍進は、採用・人事に関わる人にとっても、AI時代の「対話の自動化」を読み解くうえで追う価値のある事例です。
※本記事は、各社の公式サイトおよびプレスリリース等の公開情報をもとに構成しています。各サービスの最新の仕様・料金・シェアは、提供元の公式情報をご確認ください。